第11章 番外

星野澪はかつて、地球を半周して葵野心音の『ジゼル』を観に行くことが、二人の再会の始まりだと思っていた。

パリから東京へ向かう便の中で、彼は次の再会を心待ちにし、空港で彼女が一番好きだという小説を一冊、プレゼントとして買ったほどだった。

その時の彼に、どうして想像できただろうか。それが、葵野心音に会う最後の機会だったなどと。

彼女は、航空機事故で死んだ。

皮肉なことに、彼女は搭乗する直前にメッセージを送ってきていた。「これから返信に時差ができるかも。焦らないでね」

彼は返した。

「気をつけて。着いたら教えて」

彼女からの返信は、二度となかった。

葵野心音は永遠に...

ログインして続きを読む