第102章

「黙って見過ごすなんて、できるわけないでしょう」

 橘詩織は一度瞳を閉じ、震えそうになる声を必死に抑え込んで冷静さを装った。そして、すぐに言葉を継ぐ。

「霧島社長、あなたは私を助けてくれました。今度はあなたが苦境に立たされているのですから、私が力になるのは当然です」

 彼女は少しの間、沈黙した。頭の中で計算を巡らせているかのような間を置き、数秒後に決意を込めて唇を開く。

「手元にいくらか資金があります。まずはそれを当座の運転資金に充てて……あとのことは、また一緒に考えましょう」

「言ったはずだ。この件は俺が自分で処理する」

 電話の向こうで、霧島湊はわずかに沈黙した。彼もまた、こ...

ログインして続きを読む