第110章

橘詩織は彼女の態度が急変することなど百も承知だった。心は凪いでいたが、ただただ鬱陶しい。彼女は瞳を閉じ、そのくだらない挑発を無視するように冷たく言い放つ。

「ここへは歓迎されていないの。帰ってちょうだい」

「帰って?」

白川亜希は鼻で笑った。まるで最高の冗談でも聞いたかのように。

彼女はドアの方を一瞥する。隙間からは、廊下の少し離れた場所で電話をしている西園寺玲央の姿が見えた。

あの距離では、病室内の会話など聞こえるはずもない。

白川亜希は口角を吊り上げ、散歩でもするかのようにベッドへと近づき、身を乗り出した。

笑みを浮かべてはいるが、瞳の奥は笑っていない。そこにあるのは、顔が...

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