第144章

張り詰めた空気の中、ウィルソンが差し出した名刺は、行き場を失ったまま宙を彷徨っていた。

彼の顔に張り付いていた得体の知れない笑みが、瞬時に消え失せる。数秒の沈黙の後、彼はゆっくりと名刺を引っ込めた。

指先が名刺の縁を軽く撫でる。その瞳から詩織への値踏みするような色は消え、代わりに侮辱された商人の冷徹な光が宿った。

「西園寺社長」

ウィルソンの声からは笑意が完全に消えていた。抑揚のない平坦な声色は、上から押さえつけるような圧迫感を孕んでいる。

「どうやら、あなたが言うほどこの提携を必要としているわけではないようですね。最低限の連絡手段さえ、これほど頑なに拒絶するのですから」

彼は西...

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