第154章

ドアの外で続いていた怒号と扉を蹴る音が、長い時間を経てようやく止んだ。

橘詩織はドアに背を預けて座り込んでいた。張り詰めていた糸が切れ、激しい感情の波が引いた後の体は小刻みに震えている。全身に残っているのは、感覚の麻痺と、虚脱に近い疲労感だけだった。

西園寺玲央に強く掴まれた手首の痣が、ずきずきと痛み始めている。口の中には、彼に噛みついた時の微かな鉄錆の味が残っていた。

だが、そんな肉体的な痛みなど、心が完全に抉り取られた後の荒涼とした痛みに比べれば、何の意味もなかった。

橘詩織は伏し目がちに床を見つめ、唇の端に苦い笑みを浮かべた。

西園寺玲央の言葉には、一言一句たりとも謝罪の色は...

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