第169章

「どうして、ここに?」

橘詩織は掠れた声で辛うじて問いかけた。起き上がろうとするが力が入らず、仕方なく顔だけを西園寺玲央へ向ける。

言い終わってから違和感を覚え、すぐに言い直した。

「私が、どうしてここに?」

その言葉に、西園寺玲央は膝上の本から視線を外し、彼女のやつれた顔へと向けた。

すぐには答えず、一拍置いてから淡々と告げる。

「部下が運んできたんだ」

その声からは感情が読み取れない。「胃粘膜損傷だ。胃洗浄をして、今は点滴中。数日は経過観察が必要だとさ」

説明は簡潔で、冷酷ですらある。余計な慰めもなければ、事情を問いただすこともしない。

「契約は?」

橘詩織は反射的に...

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