第255章 こここそが彼女の家

「それもいいんじゃないかしら」

 橘凛は水道の蛇口を閉め、ペーパータオルを手に取ってゆっくりと手を拭きながら、穏やかな口調で言った。

「流れに身を任せるのも。感情なんて無理強いできるものじゃないし、かといって先のことを過度に心配する必要もないわ。私は……あなたと兄さん、案外お似合いだと思うけれど」

 貝本直紀は、橘凛の口から『お似合い』という言葉が出るとは思わず、一瞬呆気にとられたが、すぐに心からの明るい笑顔を浮かべた。そこには、ほんの少しの甘さと安堵の色が混じっている。

「そう? あなたもそう思う?」

 親友に認められたことで、彼女の心は随分と軽くなった。

「ええ」

 橘凛は...

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