第12章 名残惜しいのか?

一瞬、頭が真っ白になったあと、千葉椿は反射的に一歩引き、勢いよくドアを閉めようとした。

――が、間に合わない。

男は陰った顔のまま長い脚を踏み出し、閉まりかけた扉に身体をねじ込むようにして塞いだ。

「どうした。俺に会いたくないのか」

羽鳥紅蓮の顔色は、墨でも垂らせそうなほど暗い。

千葉椿は悟った。今日は逃げ切れない。

彼女はひらひらと手を振り、ぎこちない笑顔を貼りつける。

「まっさかぁ」

にやりと悪戯っぽく笑い、羽鳥紅蓮の手首を掴んだ。

「さあさあ、どうぞどうぞ! 来てくれるなんて、嬉しすぎて泣きそうですぅ!」

有無を言わせない力で羽鳥紅蓮を室内へ引きずり込み、くるりと身...

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