第25章 従兄弟が一人の女を奪い合う

橘言一は薔薇を山ほど贈ってきた。千葉椿はそれを一本ずつほどき、オフィスの全員に配っていく。配り終えると、残りは十九本。花瓶に挿してデスクに置き、彼女は何事もなかったように図面へ戻った。

千葉椿は、自分のデザインに対してとことん真面目な人間だ。描き込みに夢中になると、食事すら忘れる。そんなことは橘言一も百も承知で、昼どきになると案の定、電話がかかってきた。

「椿、昼飯だ」

「うん、わかってる。あとちょっとだけ」

そう言って千葉椿は通話を切り、「あとちょっと」のラフを描き続けた。描き終えて時計を見た瞬間、目が泳ぐ。もう午後一時半だった。

「……やば」

伸びをして立ち上がり、近くの小さ...

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