第36章 彼の本当の身分

千葉椿はまた寺内部長の部屋のドアを叩いた。けれど――返事がない。

「……いないの?」

仕方なく、あの「三郎様」の番号に電話をかける。

今度こそ、ようやく繋がった。

――が、出たのは三郎様ではなかった。しかも相手はフランス語でまくし立ててくる。

(やめて……フランス語だけは無理)

千葉椿は頭が痛くなりながらも、意地で英語に切り替えた。幸い、相手は通じたらしい。

千葉椿が「三郎様を」と告げると、相手は明らかに一瞬固まり、それからきっぱり言った。

『こちらに『三郎様』という方はいません』

千葉椿の胸が、ひゅっと縮む。

(まさか……あのクソも拉致られた? いや、ない。あいつが?)...

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