第59章 罠

矢野炎は震える脚で立ち上がった。歯の根が合わず、声まで裏返る。

「しゃ……社長……こ、こんなことになるなんて、俺も……」

「で、どうするつもりだ?」

羽鳥紅蓮は、明らかにもう我慢の限界だった。

「そ、それは……」

矢野炎が言い終える前に、会議室の扉が再び開く。入ってきたのは羽鳥お爺さん――羽鳥国隆だった。鷹のように鋭い視線で役員たちをひと撫でし、それから口を開く。

「今回の件は、矢野部長も想定外だった。だから、形だけの処分で済ませればいい」

羽鳥紅蓮は顔を上げ、羽鳥国隆を一度だけ見た。口元に浮かんだ笑みは、冷たかった。

「……どの立場で、口を挟んでいらっしゃるんです?」

羽...

ログインして続きを読む