第87章 鷲尾南作

千葉椿が顔を上げて、誰が来たのか確かめようとした、その瞬間だった。

羽鳥紅蓮が彼女の額を押さえ、ぐいっと枕へ戻す。

「いいから寝てろ」

「紅蓮さん、来たって聞いてさ。最初は信じてなかったんだけど……本当にいたんだね?」

羽鳥紅蓮は返事をしない。

すると、その男は遠慮というものを知らないらしく、数歩でベッド脇まで寄ってきた。

「俺の義姉さんは――」

言い終える前に、男は千葉椿の肩口の傷に目を落とす。

「誰だよ、これ。義姉さんをこんなふうにしやがって」

そこで千葉椿は、ようやく男の顔をまじまじと見た。

色白で、いかにも真面目そうな顔立ち。縁なし眼鏡に白衣。見た目だけなら上品な...

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