第10章

高田雅弘視点

 雅弘は狂ったように車を飛ばした。車庫へ猛スピードでハンドルを切り、あやうく郵便受けをなぎ倒すところだった。

 彼には策があった。絶望的な状況での、一か八かの賭けのような策だ。

 玄関のドアは大きく開け放たれていた。

「晴美!」雅弘は叫びながら玄関ホールに踏み込んだ。

 リビングに駆け込み、そこで凍りついた。

 家財道具がすべて運び出され、もぬけの殻になっていたのだ。

 そして、その混沌の只中でクリップボードに目を落としていたのは、潤だった。

 雅弘の頭に血が上った。

「俺の家で何をしてやがる!」雅弘は怒号を上げた。掴みかかろうとしたが、潤は眉一つ動かさない。...

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