第100章

紬はおとなしく神崎吉弥の腕に抱きつき、静かにたずねた。

「おじいちゃん……紬、行ってほしくないの?」

神崎吉弥は唇を結ぶ。

紬がこうして聞き分けよくなるたび、胸の奥がきゅっと痛んだ。

彼は小さく息を吐き、正直に言う。

「そうだな。おじいちゃんは……手放したくない」

丹精込めて守ってきた花を、誰かの目に晒したくない。そんな身勝手な独占欲。

けれど、ふと脳裏をよぎる。

かつて実里も、同じように守られて――世界のきらめきを見る前に、悔いを残して逝った。

だから今度は、世の中の華やかさを全部、紬の目の前に差し出したい。もっと広い世界を見せたい。

紬は神崎吉弥にもたれ、少し考えてか...

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