第7章

水野心愛の手には、ウサギのぬいぐるみがあった。紬が肌身離さず抱いていた、あのウサギだ。

「お義父さん、お義母さん。ご安心ください。紬のウサギが家に残ってるんですもの。あの子、きっと取りに戻ってきます」

他の人間は知らない。このウサギが、紬にとってどれほど大事かを。だが水野心愛だけは知っていた。

早くに亡くなった母親が遺した、たった一つの形見。

あのクソガキは毎日抱えていた。いちばん酷く殴ったときでさえ、手放さなかった。

水野心愛は覚えている。ある日、どれだけ紬を抓っても泣かなかったのに――ウサギを奪って耳を切った瞬間、あの子は喉が裂けるほど泣き叫んだ。

水野源は、心愛の手の中でボ...

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