第82章

神崎旭は今日は習い事に行かず、子分みたいに紬のあとをついて、こちらまで来ていた。

紬の視線を追って向かいの建物の二階を見上げ、旭が尋ねる。

「どうしたの?」

玄関に入ろうとしていた紬はくるりと踵を返し、向かいの別荘へ駆け出した。

小さな顔には怒りがありありと浮かんでいる。

神崎雅志は足を止め、すぐに追う。

「紬?」

吉川貴弘の胸がひゅっと縮む。まずい。姫様の機嫌を損ねるようなこと、何かあったか?

さっき入る前、紬は右手のパキラをちらりと見た。

まさか、パキラが気に入らなかった……?

「早く早く! 誰か二人、来い! そのパキラ、裏庭に運べ!」

吉川貴弘はそう指示を飛ばすと...

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