第10章

藤原智史の顔色が、さっと沈んだ。

彼は沈村薫子へ顔を向け、濃い警告を滲ませた視線で言い放つ。

「聞いたな。今夜は爺さんが実家に来いってさ。沈村薫子、言っとくけど、爺さんは重い高血圧だ。今夜は余計なこと言うな。この二日間の話を、老人の前でぶちまけるな。もし爺さんが倒れたら……俺は絶対に許さない」

一拍置いて、彼の目が薫子の左手の傷へ落ちる。口調はわずかに緩むが、相変わらず「施し」だった。

「今夜、ちゃんと夫婦の芝居を打て。言うべきじゃないことは言うな。そうしたら……離婚協議の件も、もう一度話し合ってやる」

沈村薫子は、その自信満々の男を見て、皮肉に笑いたくなった。

まだ、自分が離婚...

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