第22章

松野博は苦いコーヒーをひと口含むと、くるりと踵を返してデスクへ向かい、スマホを手に取った。慣れた手つきで実家の番号を呼び出す。

コール2回。すぐに繋がり、受話口の向こうから松野母の張りのある声が飛んできた。

「博? こんな時間にどうしたの。会社、もう落ち着いたの?」

「母さん」

松野博はソファに腰を下ろし、いかにも何気ない調子で切り出した。

「来週の水曜、国際ビジネスサミットの晩餐会があるだろ。新しいドレス、仕立てるつもりはないのか?」

すると松野母は、いかにも心底うんざりしたようにため息をついた。

「何を仕立てるのよ。前によく通ってたオートクチュールの店、あそこのチーフデザイ...

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