第42章

「智史、そんなに急がないで。お医者様もまだ傷が塞ぎきってないって言ってたでしょう。激しく動いちゃだめよ」

甘ったるい女の声が耳に届いた瞬間、沈村薫子の胸がびくりと跳ねた。はっと横目を向ける。

少し離れた先を、坂原千尋が藤原智史の腕にしなだれかかるように絡みつき、悠々とこちらへ歩いてくるところだった。

一週間あまり見ないうちに、藤原智史はひと回りもふた回りも痩せていた。

あの日、藤原お爺さんに打たれた鞭の傷は、まだ癒えていないのだろう。歩き方にはぎこちなさが残り、顔色も病人のように白い。

けれど、沈村薫子を目にしたその瞬間だけは、死んだように沈んでいたあの目の奥を、言いようのない複雑...

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