第45章

松野博がようやく腕の中の女の顔をはっきり捉えた、その瞬間――。

雷に打たれたみたいに全身が硬直し、心臓が底のない氷室へ真っ逆さまに落ちていった。

スーツは血でぐっしょりと染まり、暗い赤が布地の上で滲み広がっている。目を背けたくなるほど生々しい。

それでも血は止まらず、じわじわと新しい赤が浮いてきた。

彼女の掌には、砕けたガラス片が握り締められたまま。鋭い破片が肉へ深く食い込み、指の間から粘つく血が糸を引いて落ちていく。

どれほど痛かったのか。

どれほど絶望したのか。

こんな残酷なやり方で、自分を傷つけるしかなかったなんて。

「沈村薫子……やめろ、頼む……怖がらせないでくれ」

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