第50章

松野博はまぶたを持ち上げ、彼女を見た。

「……ん?」

「この前のこと、本当にありがとうございました。助けてくれて……あなたがいなかったら、私……きっと……」

沈村薫子は下唇をきゅっと噛む。澄んだ瞳には、真っ直ぐな感謝と切実さが滲んでいた。

「ずっと考えてたんです。私に何ができるだろうって。今の私じゃ、あなたに商売の利益なんて返せないかもしれない。でも、何か手伝えることがあるなら……要望でも何でも、言ってください。私にできることなら、必ずやります」

恩を返したい。そうしなければ、二人の間に曖昧に残る境界線を、きちんと引けない気がして。

だが言い終えた瞬間、松野博の視線がふっと陰った...

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