第58章

午後5時半。夕暮れはいよいよ濃くなり、街には灯りがともり始めていた。

松野グループ最上階、社長室。

沈村薫子は、半ば覚悟を決めるような気持ちでここへ来ていた。

小春が松野博の秘書からの電話を取り次いだとき、本当は断るつもりだった。けれど相手が持ち出したのは、きわめて正式な業務上の名目。

スタジオスターの既製服ライン第1期に関する、投資予算と運営計画について。

プロジェクト責任者である以上、投資側の正当な要請を断る理由はない。

沈村薫子はひとつ深く息を吸い、手を上げて扉をノックした。

「入れ」

低く艶のある声が、扉越しに響く。

沈村薫子はドアを開け、中へ入った。その頃にはもう...

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