第32章 長い間待っていた

松本渚はそれらの言葉を認めたくなかったが、事実は目の前に横たわっていた。

彼女もこの男に反応してしまう。しかも、かなり激しく。

もし何も考える必要がなく、何の恨みも背負っていなければ、彼とこのまま堕ちていくことも本当にあり得たかもしれない。

だが、有り得ない!松本渚には今、しなければならないことがある。

彼女は力を込めて男の手を振り払い、その腕から抜け出すと、躊躇なく彼をさらに遠くへ押しやった。

「言ったでしょう。私たちの間に可能性はないわ。私に時間を無駄にしないで」

藤原時は意に介さない様子だった。

「人事を尽くせば何でも可能さ。それに俺が望めば、君と俺が一緒になるのを誰も邪...

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