第53章 十分に野生

佐藤雲一が立ち去ると、執事は歯ぎしりして怒りを露わにした。

「お前のような悪辣な女め、田中お嬢様の髪の毛一本にも及ばんわ!吐き気がするわ!」

彼は冷ややかに鼻を鳴らし、服についた埃を払い落として立ち去ろうとした。

だが思いもよらず、松本家の門前に控えていた若いボディガード数人が歩み寄ってきた。

「何をするつもりだ?老人を殴りでもするのか?」

数人は顔を見合わせ、笑みを浮かべた。

「ふん、お前はこれまで散々権力を笠に着て人をいじめてきたな。まさか今日のような日が来るとは思わなかっただろう?」

門前で一瞬にして喧嘩が始まった。松本渚は二階のバルコニーからその様子を眺め、スマホを取り...

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