第59章 自ら彼にキスする

松本渚は言葉を聞いて、一瞬体が固まった。

部屋に入るやいなや、目の前に広がる豪華な光景に圧倒された。

広々としたリビングは明るく照らされ、中央には巨大なクリスタルシャンデリアが輝き、贅沢な金箔装飾が価値を物語っていた。

右手には二層分の高さを誇る床から天井までの窓があり、その外にはプライベートプールの水面が光を反射していた。

中腹の木々に囲まれたこの別荘は、どこか神秘的な雰囲気を醸し出していた。

ずっと藤原時が並の人間ではないと感じていたが、帝都のような一寸の土地さえ金に換算される場所で、一般には開放されていない山の中腹にこのような別荘を所有しているとは思わなかった。

これは単に...

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