第11章

携帯の電源を切り、私はこの世界から半月ほど姿を消した。

荻野さんの話では、緒方智也は狂ったように東京中を捜し回っていたらしい。

退院後、私は離婚届を携えて、足早に彼の家へと向かった。

私の姿を認めた瞬間、緒方智也は呆気にとられたような顔をしたが、すぐに冷ややかな笑みを浮かべて離婚届をテーブルに放り出した。

彼の視線が私の腹部に落ちる。そして、ねっとりとした口調で問いかけてきた。

「離婚だなんだと言う前に、俺に言い忘れてることがあるんじゃねえのか?」

私は淡く微笑んだ。

「以前は確かにありました。でも、今はもうありません」

「子供はもう処理しました。ですから、ご安心...

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