第11章
西村成実視点
夜十一時、私は一人、マンションのバルコニーに座っていた。街の灯りが、私の複雑な心境を映し出しているようだった。
「一晩、考えさせて」
健太にそう告げた時、自分の声は思ったよりも落ち着いていた。だが今、一人でこの選択に向き合うと、心は嵐の海のように荒れ狂う。
目を閉じると、健太との思い出が溢れてきた――高校時代から、今に至るまで。白熱した議論、真っ向からの勝負、そして最近の息の合った連携……一つ一つの瞬間が、まるで昨日のことのようにはっきりと蘇る。
「あれだけ言い争って、ぶつかり合ってきたのは――私たちが、あまりにも似ているから」と、私の声は夜風に攫われていった。...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章

7. 第7章

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9. 第9章

10. 第10章

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