第8章
高橋健太視点
成実の家のドアの前にギフトボックスを置いてから、週末はずっと彼女の反応を心待ちにしていた。
あの限定版の美術作品集は、そう簡単には手に入らない代物だった。昨夜の感謝祭では彼女を庇ってやれなかったが、この贈り物で俺のメッセージは伝わるはずだ。――君の才能を認めている、応援している、と。
分かってくれる、よな?
月曜日の朝、オフィスはガラス張りで陽光が差し込み、俺は成実の反応を窺おうと、わざとクリエイティブ部門の前を何度も通り過ぎた。
だが彼女は俯いたまま仕事に集中し、こちらに視線を送ることすらなかった。
あの夜のショックから立ち直るには、まだ時間が必要なの...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章

9. 第9章

10. 第10章

11. 第11章


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