第9章

西村成実視点

家でスマホをいじりながら、昨日の完全な決裂を忘れようとしていた。

突然、小百合からパニックに陥った声で電話がかかってきた。「成実！　会社が、会社が大変なことになってるの！」

「どういうこと？」私は身を起こした。

「田中プロジェクトが完全に大ゴケしたの！　たった今クライアントから電話があって、ものすごく怒ってる！　24時間以内に満足のいく提案書を提出できなければ、契約は破棄、損害賠償で訴えるって！」小百合の声は震えていた。

心臓が一気に跳ね上がった。田中プロジェクトは会社の生命線だ。このクライアントを失ったら……。

「美咲が引き継いだの？」

「引き継いだけど…...