第5章

三日後、私たちは瑛太がプロポーズした海岸へ車を走らせた。道中ずっと、私は窓の外を眺めていた。街並みがぼやけて海岸線に変わっていくのを。瑛太はいつものように、私の太ももに手を置いていた。今では、その手を振り払ってしまいたかった。

「大丈夫?」彼が訊いた。「静かだね」

「結婚式のことを考えてただけ」私は無理に微笑んだ。「あと十二日だね」

「ああ」彼は私の脚をぎゅっと握った。「待ちきれないよ」

ええ、そうでしょうね。

海岸はほとんど人気がなかった。ジョギングする人たちと、犬を連れた老人くらいだ。半年前、瑛太はまさにこの場所で片膝をついた。私が「はい」と答えて泣いている間に、頭上で花...

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