第4章 純真な少女が死んだ

屋上への扉が、彼女の背後で爆発するように開いた。水野奈津の声が、刃のように夜の静寂を切り裂いた。

「早苗! 動かないで!」

浅倉早苗は驚いて振り返った。水野奈津が戸口に立っていた。胸を激しく上下させ、その瞳はパニックで常軌を逸していた。

「奈津……どうしてここが?」

「GPS追跡よ。何時間も電話し続けたんだから」

水野奈津は傷ついた動物に近づくかのように、慎重に屋上へと足を踏み入れた。両手は、なだめるように上げられている。

「何があったか知らないけど、こんなことをする価値なんてない」

「あなたにはわからない」

浅倉早苗の声が途切れた。

「私の人生、全部が茶番だったの...

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