第8章
翌朝、渡辺昭は花束を手に病院へやってきた――私がよく飛んでいた山に咲いているような、そんな花だった。
絢紀は私のヘルメットを胸に抱きしめ、ロビーを歩いていく。そこには一晩中張り込んでいた報道陣がいた。カメラが二人の一挙手一投足を追ったが、今度の渡辺昭は急いだり隠れたりしなかった。
ある記者がマイクを突き出すと、絢紀はどうすればいいかというように渡辺昭を見上げた。彼は励ますように頷く。
「この人は、私のパパです」
絢紀ははっきりとした声で言った。その小さな手が、彼の手を探しあてる。
「ママがいつも言ってた通り、私を見つけに来てくれたの」
見て、あの子を。胸が熱くなるような...
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