第22章 五十億

そう言われて、相沢千夏はこくりとうなずき、自嘲するように口元だけで笑った。

「……そのとおりね。もちろん、必要ない」

それから彼女は何事もなかったように、ヨガの動きを続けた。

氷川隼人は唇を引き結び、彼女を一瞥すると、そのまま階段を下りて地下室へ向かった。

数分後。

彼は、あの口のきけない男を連れて戻ってくる。

男は黄ばんだ顔色で、目にも力がなく、前よりいっそう痩せ細って見えた。

「木村。連れていけ」

氷川隼人は、ちょうど駆けつけた木村秘書に命じた。

「はい、氷川社長」

木村秘書は即座に応じ、手際よく男を押さえて玄関の外へ連れ出した。

それを見届けると、相沢千夏は目を細...

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