第32章 救えるか?

その言葉を聞くなり、中年の女はおずおずと氷川隼人を一瞥した。視線がぶつかった瞬間、びくりと肩を震わせてすぐに逸らし、後ろめたそうに床へ目を落とす。

氷川隼人は急かしもしない。気怠げに指を鳴らすように動かし、彼女が口を開くのを待った。

一秒、また一秒。時間だけが落ちていく。

だが、沈黙を破る者は誰もいない。

狭い倉庫の中は異様なほど静かで、中年女の荒く浅い呼吸音さえはっきりと聞こえた。鼻翼がひくひくと震え、縛られた両手は拳になってはほどけ、また拳になる。

——夫がギャンブルに溺れさえしなければ。

貯金を食い潰し、借金までこさえなければ。

自分だって、こんな真似に手を染めることはな...

ログインして続きを読む