第52章 意外

20時30分、香水展示ホール。

相沢千夏は深い藍色のイブニングドレスをまとっていた。裾は水のさざ波のように優雅に足首まで流れ、襟元と袖口には繊細なラインストーンがあしらわれ、照明を受けて青白い光をちかちかと返している。長い髪は上品にまとめられ、ほっそりと白い首筋があらわだった。唇には優雅な微笑み。氷川隼人の腕にそっと手を添え、そのままホールへ足を踏み入れる。

二人は一瞬にして、会場中の視線をさらった。

「氷川社長、氷川奥様、こんばんは」

入ってすぐ、数人の貴婦人たちが自ら歩み寄ってきた。

先頭に立っていたのは、60歳前後と思しき品のある婦人だった。シャネルの定番スーツに身を包み、首...

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