第57章 ショートヘアの女

相沢千夏はくすりと笑い、脱いだ服をそのまま個室のフックに掛けたまま、何食わぬ顔で外へ出た。

女子トイレは出入りする女性が多い。怪しい気配はない。

彼女は深く息を吸い、洗面台の前でゆっくりと手を洗いながら、鏡に映る入口の様子を観察した。

——五分ほど経ったころ。

入口の外を、黒いジャケットの男がうろついているのが見えた。誰かを待っているようで、こちらにはまるで注意を払っていない。

相沢千夏はすぐに気づいた。

あれは、尾行していた男のひとりだ。

視線をさらりと外し、胸の奥で小さくガッツポーズする。やっぱり、変装は効いている。

彼女は口紅を取り出し、鏡を見ながら唇の輪郭を丁寧になぞ...

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