第64章 邪術

氷川景吾の口から母のことが出た瞬間、氷川隼人の顔色がすっと沈んだ。纏う空気まで、目に見えて変わる。

さっきまでの彼が、獲物を待ちながら息を潜める猛獣だとするなら――今は、噴き上がる寸前の火山だった。危うく、致命的で、触れればただでは済まない。

執務室の温度まで、数度下がったような気がした。空気は重く、息が詰まるほどに張りつめている。

「わかっている」

氷川隼人はゆっくりとうなずいた。声は低く、かすかで、けれど一言一言が重い。心臓をまともに打ち据えるような響きだった。

「安心してください。母の名誉を傷つける者は、誰であっても許しません。氷川グループを壊させるつもりもない」

氷川景吾...

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