第123章

夜の八時、二人がカラオケの入り口に着くと、向こうから一組の男女が近づいてきた。男性はきちんとした服装で、端正で知的な風貌。そしてその隣の女性はシャネル風のアーモンドカラーのジャケットに、ふんわりとしたウェーブヘアで愛らしく見える。

その瞬間、小林理沙は顔を殴られたような衝撃を感じた。

ほんの少し前まで「会社が忙しくて迎えに行く時間がない」と言っていた人が、今は別の女性と一緒に現れたのだ。

水原花子は眉をひそめ、彼女の手を引いてそちらへ向かい、作り笑いで言った。

「江口さん、なんて偶然でしょう。でも理沙から聞いたところによると、会社で残業中じゃなかったの?彼女を迎えに行く時間もないって...

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