第165章

ドアが「ばん」と勢いよく開かれた。

西村のお婆さんが怒った顔で入ってきて、息巻いた。

「ここにいたのね。せっかく良かれと思って見合いの宴会を開いてあげたのに、黙って隠れるなんて。まだ嫁を探す気があるのかい?」

「ない」西村達也はそっけなく答えた。

「……」

西村のお婆さんは息が詰まりそうになった。

「気がなくても行くのよ。西村家の嫡子なんだから、結婚しなさい。椎名楽はもう亡くなったのよ。いつまでぐずぐずするつもり?」

西村達也が書類をめくっていた長い指が一瞬止まった。

西村のお婆さんは書類を引っ張って脇に放り投げた。

「仕事なら何時でもできるわ。今日でなくてもいいでしょう。...

ログインして続きを読む