第176章

葉田月見は緊張した表情で、小声で言った。

「お母さん、西村さんは気難しい人だから、私、本当に彼が...」

「行かなければならないのよ。西村さんが承知しなければ、西村お婆さんに頼みなさい。これは私たちが葉田家での地位を証明するときなのよ」幸村絵里は彼女に言い聞かせた。

葉田月見は目を輝かせ、小さく頷いた。

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裏山の馬場。

一頭の気高く骨太な馬が草地を自由に駆け回っていた。馬に跨った男は長い鞭を振り、颯爽とした黒の乗馬服を身にまとい、まるでヨーロッパの貴族のように優雅で気品に溢れ、全身から息詰まるような男の魅力を放っていた。

やがて馬は止まり、西村達也は馬から飛び降り、襟元...

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