第177章

水原花子は彼を見向きもせず、直接キッチンへと掃除道具を探しに行った。しばらく探しても見つからず、今度はベランダへと足を向けた。

ソファに静かに座っていた西村達也の端正な顔は、次第に冷たさを増していった。

どういうことだ?

彼女なら、会うなり幸村光輝に土地を譲ったことを責め立て、そして必死に自分に頼み込んでくるはずじゃなかったのか?

想定していたシナリオとは違う展開に、西村達也は冷ややかに立ち上がり、彼女の方へ歩み寄った。

水原花子はようやくベランダで箒を見つけ、振り返った瞬間、彼の硬い胸板にぶつかった。鼻が折れそうなほどの痛みに、

「西村さん、何をしているんですか?」

「それは...

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