第195章

彼は言い終わるとスーツの上着を手に取り、立ち去ろうとした。

「あなたは彼を向こうで死なせたいだけでしょう。そうすれば西村家を巡って競争相手がいなくなるわ」西村新子の口調は鋭かった。

長い脚が一瞬止まり、西村達也はゆっくりと口を開いた。

「ご自由にお考えください」

「西村達也、私が一番後悔しているのはあなたを産んだことよ。堕ろしておくべきだったわ」

西村新子の声が背後から聞こえた。

西村達也は何も言わず、そのままエレベーターに乗り込んだ。

竹内健司は彼の表情を恐る恐る観察していた。波一つ立たず、無表情だったが、彼にはわかっていた。今の西村達也は、嵐の前の静けさのような状態だと。

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