第46章

彼は近づいただけで彼女から漂う匂いを嗅ぎ取ったが、もうそんなことを気にしている場合ではなかった。

彼は駆け寄って彼女を強く揺さぶったが、まったく反応がない。彼女の体は氷のように冷たく、顔は蝋のように黄ばんだ紙のようで、微動だにしなかった。

もし鼻先にかすかな息づかいを感じなかったら、彼女が死んでいるのではないかと疑ったことだろう。

彼は彼女を抱き上げ、急いで玄関へと駆け出した。入口に隠れていた老婆はその様子を見て、すっかり怯え、長居することもせず、慌てて裏口から逃げ出した。

西村達也にはそんな老婆を追いかける余裕などなかった。今すぐ水原花子を病院に連れて行かなければ、彼女は確実に死ん...

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