第50章

「あなた……」水原花子は頭に血が上り、彼の首に飛びついた。

彼女の動きがあまりにも素早かったため、西村達也は本当に驚いた。

この女、まさか強引にキスしようとしているのではないか。彼の頭にふとゼリーのような彼女の唇が浮かび、ほんの二秒ほど躊躇したその時、頬に鋭い痛みが走った。

なんと彼女は、彼を、噛んだのだ。

西村達也は力任せに彼女を突き放した。

「水原花子、俺に何もできないと思ってるのか?」

男の目の奥に怒りの炎が燃え上がっていた。水原花子は冷静さを取り戻し、ゾッとした。自分はなんてバカげたことをしたんだろう。

「あの……説明できるわ。これは全部……全部あなたのことが大好きだか...

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