第20章

西原雨子は、ぼんやりと道端に立ち尽くしていた。

何台かのタクシーが前を通りかかり、運転手が乗るかと声をかけてきたけれど、彼女はまるで反応しなかった。

今の自分がどんな気持ちなのか、西原雨子にはうまく言葉にできない。

もともと藤原へ来ることだって、そこまで望んでいたわけじゃない。むしろ、抵抗すらあった。

いまこうして、堂々とした理由を得て藤原を離れられるのなら、本来は喜ぶべきなのではないか。

それなのに、どうしてこんなにも胸が空っぽになるのだろう。

長いこと呆然としていたせいで、ようやく気づいた。ひとりの老人がずっと彼女の近くをうろうろしながら、様子を窺っていたのだ。

西原雨子が...

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