第31章

藤原英世が出社したばかりのところへ、加藤傑が落ち着かない様子で駆け寄ってきた。声を潜める。

「藤原様……田山さんが何度も僕のところに来てまして。ブラックリストから外せって……」

言い終えた加藤は、額の冷や汗を思わず拭った。

田山家はK市で百年続く名家だ。田山家の令嬢に逆らえるはずがない。

とはいえ、藤原英世はいまサンドヴィックとワート相手に重要な協業の話を進めている。下手に取り次いで機嫌を損ねるのも怖い。

板挟みになった加藤へ、田山夜子は鬱憤をぶつけるみたいに何度も罵声を浴びせてきた。

藤原英世は冷えた声で言う。

「放っておけ。ついでに、お前も田山をブロックしろ」

加藤はその...

ログインして続きを読む