第38章

外から藤原家に足を踏み入れた人間は、うっかりすると地雷を踏む――そんな空気があった。

自分の名が出た瞬間、田山夜子はふわりと微笑む。落ち着いた声音で、包み込むように言った。

「私は別に大丈夫です。でも英世さんの言い方は、さすがに失礼でした。代わりに私からお詫びします」

藤原涼介は一瞬きょとんとしたあと、藤原松人にしみじみとこぼす。

「夜子は本当にできた子だな……父さん、うちに夜子みたいな孫嫁が来てくれたら、藤原家の福だよ」

藤原松人は田山夜子を見つめ、慈しむように笑った。老人斑の浮いた手が、そっと夜子の手の甲を撫でる。しゃがれた声が優しい。

「英世は気が短くてな。嫌な思いをさせた...

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