第9章

西原雨子が玄関の扉を押し開けた。

深夜。――家の中はもう、全員眠っているはず。そう思っていたのに。

振り向いた瞬間、廊下に真っ白な絹のガウン姿の西原七海が立っていて、雨子はびくっと肩を跳ねさせた。

「お姉さん……あ、あれ。まだ起きてたの?」

どこかぎこちない声。

七海はふっと笑って、雨子の肩に掛かったスーツの上着へ視線を落とす。次の瞬間、笑みがわずかに引きつった。

――藤原英世の上着?

七海は小さく息を吸い込み、何事もなかったように言った。

「寝る前にお茶を飲んだら、目が冴えちゃって。晩餐会の話、どうだった? 藤原様が送ってくれたの?」

西原家で、雨子に「内緒」は通じない。...

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