第1章
私の細い指が、パソコンの画面に映る財務諸表をなぞる。眉がわずかに寄せられた。結城開発株式会社のCEOとして、毎月必ず会社の帳簿に目を通している。これは祖母から受け継いだ習慣だった。
「自分のお金の管理を、決して他人に完全に委ねてはならない」と。
だが、今日は何かがおかしかった。
「市場調査費、25万円?」
私の声が、誰もいないオフィスにクリアに響いた。
詳細記録をクリックすると、見慣れない二つの支払先が目に飛び込んできた。健康センターと、哉里私立学院。
心臓が速鐘を打ち始めた。
「こんな支出、はっきりした覚えがない」
声が氷のように冷たくなった。
「千堂奏斗、一体何をしているの?」
私はすぐに千堂奏斗のクレジットカードの記録と渡航履歴を呼び出した。結城家の相続人として、私には望む情報を何でも閲覧できるだけの権限があった。
記録によれば、先週末、千堂奏斗は「投資案件の視察」と称してC市へ行くと主張していたが、GPS追跡では彼がL市を離れていないことが示されていた。さらに衝撃的だったのは、彼の支出がすべて同じ地域――健康センターの近くを指していたことだ。
「投資案件じゃない」
私は冷ややかに分析した。
「どこかの女に貢いでいるのね」
携帯に目をやると、時刻は午後六時。終業まであと一時間。千堂奏斗はいつも定時きっかりに退社する。
「礼央は仕事に夢中になると食事を忘れるから。俺が礼央の面倒を見てあげないと」と言って、私のためにお弁当を作ってくれるのだ。
確かに、千堂奏斗はとても献身的だった。彼の行き届いた世話のおかげで、私の慢性的な胃の不調はかなり改善されていた。
そのことを考えると、私の感情はさらに複雑になった。この男は、私のことをこんなに気遣ってくれる一方で、裏ではこっそり別の女に資金援助をしていたというの?
吐き気がこみ上げてきた。怒りのせいか、失望のせいか、自分でも分からなかった。
深呼吸をして、無理やり自分を落ち着かせ、インターホンを手に取った。
「奏斗、今すぐ私のオフィスに来て」
十分後、千堂奏斗がノックして入ってきた。いつもの穏やかな笑みを浮かべて。
「どうしたんだい、礼央? また昼食を抜いたのか? デザートを持ってきたんだけど――」
「座って」
自分の声ながら、ぞっとするほど冷静だった。
「話があるの」
千堂奏斗は一瞬固まり、手に持っていた紙袋を置くと、私の向かいに腰を下ろした。
「もちろん。どうしたんだい?」
「この25万の支出についてよ」
私はパソコンの画面を彼の方へ向けた。
「この『市場調査費』が何なのか、説明してもらえる?」
千堂奏斗の顔がさっと青ざめるのが見えたが、すぐに表情を取り繕った。
「ああ、それか!戦略的な多角化投資だよ! 健康センターは新興マーケットなんだ!」
「投資?」
自分の視線がナイフのように鋭くなるのを感じた。
「じゃあ、この東野晶というのは誰?」
その名前に、胃がぎゅっと痙攣した。何かが思い出されそうだったが、確かめるのが怖かった。
「彼女は……彼女は俺のビジネスパートナーだ!」
千堂奏斗の声は震え始め、やがて怒気を帯びたものに変わった。
「礼央、結城家は視野が狭いんだ。旧態依然とした不動産しかやらない! 俺には俺の考えがある!」
私は立ち上がった。血が沸騰するようだった。四年間、私は千堂奏斗の自尊心を注意深く守ってきた。
父の前で彼を庇い、友人たちの前で彼の体面を保ち、会社に「外部投資コンサルタント」なんて役職をわざわざ作って、彼に箔をつけた。彼のプロジェクトが失敗しても、一度も責めたりせず、むしろ「市場がそうだっただけよ。あなたはもう十分頑張ったわ」と慰めてきた。
そして今、これが彼の私への報い方だというの?
「ビジネスパートナー?」
私は冷たく笑った。
「奏斗、あなたの大学時代の恋人が、今ではビジネスパートナーですって?」
そう、今思い出した。東野晶は千堂奏斗の大学時代の恋人で、一年生の時に中退してマッサージ師になった女の子だ。
千堂奏斗の顔は土気色になった。
「そんなのはずっと昔の話だ! 今はただの……ただの業務提携だよ!」
彼の声はどんどん弱々しくなっていった。
「それに、成功するためには幅広い人脈が必要なんだ。これも俺のビジネスな付き合いの一環なんだよ!」
ビジネスな付き合い? 思わず噴き出しそうになった。
つい先月、千堂奏斗が新しいマーケットを開拓したいと言った時、私は躊躇なく二千万の起業資金を渡した。彼にこう言ったのだ。
「あなたの判断を信じているわ。必要なリソースは何でも言って」と。
つい三ヶ月前、千堂奏斗が投資案件にもっと時間が必要だと言った時、私は自ら、一時的に会社に来るのをやめて自分のビジネスに専念するよう提案した。
「家の経済的なプレッシャーは私が何とかするから。あなたは自分の夢を追いかけて」と。
私はいつも自分なりのやり方で、彼を静かに支えてきた。彼が妻の脛かじりではなく、有能な男だと感じられるように。
「私の会社のお金を使って、他の女のマッサージ店の家賃や、誰かの子どもの私立学校の学費を払う――これがあなたの言うビジネスな付き合い?」
私は嘲るように言った。胸の中で火山のように怒りが噴き上がる。
千堂奏斗の目が泳いだ。
「東野晶はただの……困っているのを助けているだけの友人なんだ! 彼女には子どもがいて、生活がとても大変なんだ。見過ごすわけにはいかないだろう!」
「見過ごすわけにはいかない?」
私の声が一段高くなるのを感じた。怒りが潮のように心に満ちてくる。
困っている友人? じゃあ私は? この四年間、この結婚のために私が何をしてきたというの?
誰かが千堂奏斗の仕事について尋ねる社交の場では、いつも私が先に答えていたことを思い出す。
「奏斗は独立した投資コンサルタントで、多くの個人クライアントを抱えています」と。
プロジェクトの失敗で千堂奏斗が落ち込むたびに、いつも私が慰めていたことを思い出す。
「本物の投資の達人は皆、失敗を経験するものよ。あなたには時間が必要なだけ」と。
千堂奏斗に投資資金を渡すたびに、それが夫婦間の支援ではなく「事業協力」だと呼んで、私たちが対等なパートナーだと感じさせようとしていたことを思い出す。
それなのに彼は? 私の優しさを当たり前だと思い、私の信頼を踏みにじった!「困っている友人」を助けると口では言いながら、妻である私が彼の自尊心を守るためにどれだけ犠牲を払ってきたか、考えたこともないくせに!
「それで、あなたは会社の資金を無断で横領したの? 千堂奏斗、これは業務上横領よ!」
その時、千堂奏斗の携帯がけたたましく震えだした。彼が神経質に画面をちらりと見て、顔色がさらに悪くなるのが見えた。
「出なさいよ」
私は冷たく言った。
「あなたの『ビジネスパートナー』が何を望んでいるのか、聞かせてもらおうじゃないの」
「いや、重要じゃないんだ」
千堂奏斗は慌てて携帯の音を消した。
「礼央、君が怒っているのはわかる。でも、理解してくれ――」
ピロン! ピロン! ピロン!
携帯は執拗に鳴り続けた。千堂奏斗の額に汗が滲み始めているのが見えた。
「千堂奏斗」
私は一語一語ゆっくりと、氷のピックで突き刺すように言った。
「今すぐその電話に出るか、それとも明日、弁護士にこの件を処理させるか、選びなさい」
千堂奏斗が私の冷たい目を見つめるのがわかった。私が冗談を言っていないことを、彼は理解したのだ。結城家の法務チームは、彼の一生を一晩で破滅させることができる。
「俺……急な用事を処理しなくちゃならないんだ」
千堂奏斗はコートを掴むとドアに向かった。
「この話はまた明日しよう、いいだろう?」
「千堂奏斗!」
私は呼び止めたが、彼はすでにオフィスを飛び出していた。
がらんとしたオフィスに、静寂が戻った。
私は一人、床から天井まである窓のそばに立ち、千堂奏斗の姿が階下へと消えていくのを見ていた。
四年間の結婚生活、四年間の信頼が、こんなにもあっさりと彼に踏みにじられるなんて?
携帯が震え、千堂奏斗からのメッセージが届いた。
『礼央、明日ちゃんと話そう。全部説明するから。信じてくれ』
彼を信じる? 彼が持ってきた、私のお気に入りのパン屋の包みのままのデザートの袋に目をやった。偽りの気遣い。
私はメッセージを削除し、考えに沈んだ。
今、家に帰って彼を問い詰めても、千堂奏斗はすでに警戒している。間違いなく、もっと慎重になるだろう。何も見ることはできず、彼に証拠隠滅の機会を与えるだけだ。
もっといい計画が必要だ。
あの三ヶ月間帰っていない家――私たちの新居。
最近、プロジェクトが忙しすぎたため、私は会社の近くのマンションに泊まっていた。千堂奏斗は気を利かせて言った。
「仕事に集中してくれ。家のことは俺がやっておくから」
これが彼の言う「やっておく」ことだったわけね。
あの家の頭金は私が払った。千堂奏斗は住宅ローンは自分が払うと主張した。それが男としての甲斐性だと。その時は感動したものだ。
今思えば、彼が毎月きっちり払っていたその住宅ローンのお金は、一体どこから来ていたのだろう?
床から天井までの窓から夜の闇が落ちてきて、静かに遠くを見つめる私に影を落とした。
千堂奏斗、まさか「明日説明する」なんて簡単な言葉で私を騙せると思っているの?
結城家の女を裏切った代償がどれほどのものか、これからあなたに見せてあげる。
