第5章

どんよりと曇ったH市の午後、私は車を駆り、寂れた工業地帯を抜けていた。昨夜の千堂奏斗の両親からの切羽詰まった電話が、私自らY市へ向かわなければならないという決意を固めさせたのだ。

二時間の道のりは、考えを整理するには十分すぎる時間だった。訪問の目的は明確だ。千堂奏斗の両親に、彼の不貞と、私たちが離婚間近であることを告げる。しかし同時に、結婚生活が終わるとしても、今後も月々の生活費を援助する意思があることも伝えておきたかった。

千堂奏斗は一人息子で、父の千堂健二も母の千堂恵子も、共に高齢で稼ぐ力はほとんどない。息子の過ちのせいで老夫婦が路頭に迷うのを見るのは忍びなかった。だが、援助は...

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